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Artist Interview

Vol. 002

絵を描くことで学んで来たこと

アーティスト

澁谷忠臣
Tadaomi Shibuya


Interviewed by 戸塚憲太郎(hpgrp GALLERY東京ディレクター)+ 坂口真生(ART Div. H.P.F,)

人物や動物、工業製品まで幅広いモチーフを「面」で再構成し、独自のイメージを構築する澁谷の作品は、一見シャープでフラットな印象を与えますが、手描きによる筆目や、色彩の微妙なむらが作品に深みを与え、独特の風合いを創り出しています。 両親が看板制作業を営んでいた事で、日常的に職人たちの手仕事を見て育った澁谷は、幼少の頃のロボットアニメブームに強く影響を受け、毎日たくさんのロボットや、メカの絵を描きました。美術大学ではプロダクトデザインを先攻、そのかたわら、ヒップホップに大きな影響を受け、音楽と平面表現の接点、アプローチを模索し始めます。その後、ダブ、ブレイクビート、ドラムンベースといった音楽に強く影響され、現在のスタイルを確立しています。 今後の作家としての活動が楽しみな一人です。-hpgrp GALLERY東京ディレクター 戸塚憲太郎-

“教”というタイトルの持つ意味

戸塚 hpgrp GALLERY東京では今回で3回目の個展となりますね。初の個展となった1回目のタイトルは「Construct」、2回目は「澁谷動物園」。そして来る3回目は「教」。まずこの「教」というタイトルについて聞かせていただけますか?

澁谷 今回の展示は、自分が今まで育ってきた人生を振り返った時に、今自分が何を描きたいのかを純粋に表現したいという思いがあります。 一番最初の展示では個人的に描いた作品もあれば、依頼されて描いた物など、既に在った作品を展示しました。2回目では観に来てくれた人に自分の絵を見て楽しんで貰いたいということを軸に、僕の作品を知っている人もそうで無い人も楽しめるような、動物園的に親子連れでも絵を見て楽しんで貰いたいという気持ちがありました。

今回は自分自身を深く掘り下げて、自分自身は何かということを表現したいと思っています。人は生きて行く中で色々なものに影響を受けた上で、人間形成されると思っていて、僕自身も例外無く人生の中で起こった出会いや出来事それぞれに影響を受けていて、それ自体全て僕に取っては「教え」であると思っています。それは僕自身を作り上げて来た要素であり、今回の展示作品ではそういった事を僕らしく、ストレートに表現できればいいな、と思っています。

戸塚 例えば一般的に仏教の「教え」とは何かと考えると、それは仏教を形作る「教義」あるいは「ルール」だと思うのですが、今回澁谷さんは今まで以上に内面的なベクトルで自分を見つめた結果、澁谷忠臣という人間を作っている「ルール=教え」はこれとこれです、という風に作品出して表すということですか?

澁谷いえ、そこまで明確でなく、むしろ明確でない方が今回はいいのではないかと思っています。逆にその部分は作品を観る人に感じて貰えたらいいなと思っています。 自分が音楽や旅、作品作りを通して影響されたことを、観る人に作品を通して感じたり考えたりして貰えたらいいな、と。 前回の「澁谷動物園」では色々な人に楽しんで貰いたい、というエンターテイメント的な気持ちがありましたが、今回は正直に言ってしまうと観てもらう人のことをあまり考えて無くて、本当に個人的なことを軸に描いています。

“描く仕事”を続けるバランスとは

坂口 澁谷さんは以前から、そして現在でもイラストレーター/デザイナーとして多くの仕事をしておられますが、今回のテーマについての話しを聞くと、よりアーティストあるいは作家としての意識を強く持っているように思えるのですが、いかがでしょう?

澁谷 昔から絵を描くことを仕事にしたいと思っていて、デザインやイラストを依頼されて描くという行為は僕にとって凄く現実的な選択でした。 僕は小さい頃からとにかくロボットや機械が大好きで、そういう絵ばかり描いていたんです。 ずっとそればかり描き続けられたら良いのですが、そうもいかない。 ロボットや機械が好きな気持ちをどんどん現実的に落とし込んで行く時間の中で、デザインやイラストの仕事ということと結びついて行ったのだと思います。

坂口 澁谷さんが持つ独特の直線や面での表現はそういったプロセスから生まれたスタイル、ということでしょうか?

澁谷 そうだと思います。 イラストやデザインの仕事って、結局は作り手のスタイルや画風に対しての依頼なのだと思います。クライアントの要望と自分が本当に作りたいと思うもののギャップがあることも少なくありません。 ですが基本的に僕はイラストレーターとしても、デザイナーとしても、アーティストとしても、絵を描いていることには変わりはないと思っています。それぞれ違う楽しみがあり、同時に苦しみがありますが、それ等全て含めて楽しむためには全てやるしかない、と思ってやっています。 イラストでやり切れない部分をデザインで、デザインでやり切れない部分はイラストで、それでもやり切れないことはアーティストで、みたいに。 色々なことをやりながらバランスを取って。

澁谷 僕は絵を通して色々な人とコミュニケーションを取ることが好きなので、楽しんでやっています。 とにかく僕はずっと絵を描いているから、絵を描くことでしか学んでないと言っても過言ではないと思っています。 喜びや悲しみ、人とは何か、とかそう言うことを含めて全部絵を通して感じたり考えたりしているので、自分の内面を知ろうと思ったとき、やはり絵を描くことが一番早いと思ったのです。

戸塚 しかし、何故「ロボット」なのですか?

澁谷 ううん...。 僕は逆に、自分等の世代の人には「何でロボットじゃないの?」って思ってしまうんですよね。

戸塚&坂口 なるほど(笑)


澁谷さん所有のロボットプラモデル・コレクション

近未来の象徴としての“ロボット”

澁谷 僕の作品の1つに「永遠に近未来」というタイトルの作品があるのですが、その“近未来”というイメージが僕は好きなのだと思います。 自分の作風も時々、近未来的だと言われたりします。 ただ、こう描けば近未来ですよっていうルールは別に無いですよね。 近未来のイメージは僕にとって凄くわくわくする事で、常にロマンチックな部分をキープできるものです。

戸塚 ロボットはその“近未来”の象徴という訳ですね。

澁谷 はい。それからロボットの持つ哀愁、そして可愛さという部分にも惹かれますね。それもやはり人間が作り出したものだからだと思うのです。 戸塚 話しは変わりますが、澁谷さんがロボット以外に影響を受けた事として、家業のことがあるかと以前から思っているのです。 確かお父様が看板業をやってらっしゃったと聞いているのですが、絵を描く様になったことにそこからの影響はあると思いますか?

澁谷 それは多分あると思います。 元は祖父が技術のある看板屋だったのですが、父が継いだ時に職人さんが居て、工場で作業を見ているのは凄く面白かった思い出がありますね。

坂口 実際に工場にあったペンキを使って描いたりもしていたのですか?

坂口 いや、それはあまりなくて、ただ単純に見ていたかな。

坂口 澁谷さんはイギリスのエージェントを通じて海外の仕事を少なからずやっておられますが、海外クライアントとの仕事を通しての影響はありますか?

澁谷 海外の人と絵を描く仕事を通してコミュニケーションができることは凄く興奮するし、わくわくします。 文化や考え方が違う人たちとの仕事は、理解できない部分が多々あるのですが、それを通して「知る」ことが沢山あります。 以前ジバンシーのエンブレムのデザイン依頼を受けた時にはエンブレムのことを調べて、新しい発見があったり。 それから国によってレスの早さが違うのも新しい発見ですね。


左:hpgrp GALLERY 東京 ディレクター 戸塚憲太郎

photo by 坂口真生

ヒップホップを掘り下げる

坂口 少し話題の路線を変えて、描くこと以外の興味について聞かせていただけますか?

澁谷 正直趣味とかはあまりないのですが、やはり音楽が好きですね。

戸塚 何系ですか?

澁谷 ヒップホップです。 ヒップホップの掘り下げると意外に深いところが好きです。歴史やカルチャーの影響までひも解いて行ったり、人が知らないサンプリングを使って新しい曲に作り替えて、「おお、カッコいい」ってなったり。そういった行為自体が好きですね。

戸塚 あれ、DJもしていたのでしたっけ?

戸塚 はい。スクラッチとかもやっていましたが、練習があまり好きじゃないんですよね(笑)。

戸塚 今後の展開について教えていただけますか?

澁谷 じっくり作品制作に取り組める環境を作りたいです。 今回の制作も描きながら迷う部分がとてもあって、時間的にも精神的にも追いつめた部分があります。 苦しいけれど、楽しいというか、苦しんだ末に「無」になったというか。

坂口 どこか仏教的にも聞こえますね。

戸塚 仏教的とまでは言わずとも、自然に描き始めていた絵だったり、意識しなくても影響され続けて来たロボットだったり、ヒップホップを通じて触れた歴史や文化や言葉のような文脈的繋がりだったり、そういった全てのことが無意識のうちに集まってきて、そういうものが合わさって「一体自分って何なんだろう?」と振り返った時に、自然に仏教的な「教え」に近づいて来たのかもしれませんね。

澁谷 簡単に言ってしまうと、一生懸命みんなで知恵を働かせて楽しい世界を作りましょう、ということ。 人間の性質を考えれば、探究心や研究心は間違いなく絶えないと思うし、急にテクノロジーを全て放棄して自然に帰ろう、ともならないと思うのです。 自然との接し方もテクノロジーを通じて調和をはかれたら良いな、と思っています。

戸塚 トータル的にはポジティブな作品になりそうですね。 また、今後の作品展開もとても楽しみです。 今日はありがとうございました。

Artist Profile

澁谷忠臣

1973年生まれ
多摩美術大学卒

主な展覧会履歴
2007 「construct」 hpgrp GALLERY東京
2007 「TWO FACED」 UK
2007 「DEER MILK」 WASHINGTON D.C.
2007 「digmeout STRIKES BACK!」PORTLAND

その他GIVENCHYや楽天ゴールデンイーグルスのグラフィックも手がける。


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